恋と恐怖は突然に
〜第1話 きっかけ〜
〜登場人物紹介〜
・天中 怜(あまなか りょう)
20歳の大学2年生。長所も短所も特にないという一般的過ぎる男。
・神崎 癒梨子(かんざき ゆりこ)
校内で有数の成績優秀者で、容姿も性格も抜群。天中の思い人。
・手塚 修(てづか おさむ)
某有名漫画家…ではなく、近未来の科学者。研究分野は恋愛心理学。
彼女は俺のことをどう思ってるんだろう? 人の気持ちを簡単に動かすことが出来たらなぁ…。
そんなことを考えながら講義を受けている大学2年の天中怜は、二列の間を空けて右斜め前に座っている女性、神崎癒梨恵に視線を注いでいた。入学当初に出会って一目惚れし、それ以来ずっと天中の思い人だった。
その事実に神崎癒梨恵は気が付いていない。天中の方もほとんど話したことがないこともあって、すぐに告白しようとは思っていなかった。
しかし最近、神崎と仲良く話している男がいて、不安になっているというわけである。自分の気持ちを伝えたいと焦るようにもなっていた。
そんな雑念もあって天中は講義に身が入っていなかったが、担当教授から注意されないよう、ノートを書くフリをしながら講義に出席している。
そして天中は遂にはこんなことを考えるようになっていた。楽に人の気持ちを動かすことが出来る薬…例えば即効性の惚れ薬があったら、と。
インターネットに接続してそういった類の薬について調べたことがあった。手塚修という科学者がその研究をしていることは突き止めている。
今度の連休中にでも、なんとかその手塚博士に会って話をしてみよう――そんな風に思いを巡らせていると、担当教授の声が室内に響いた。
「今日の講義はこれまで」
それを合図に次々に生徒たちが口を開く。天中も教室を後にした。
そして、翌日。今日は土曜日ということで大学は休みだ。生憎の曇り空ではあるが、逸る気持ちを抑えられなかった天中は出掛けることにした。
行き先はもちろん手塚研究所である。電車に揺られながら、天中は手塚博士に関する知識と自分の目的を頭の中で整理した。もし事が全て上手く運べば、自分はこの世で一番の幸せ者になれるかもしれない――
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