〜第2回 行事〜
―――始業式を終えてから、既に数日の月日が経っていた。もう3年目とあってか、1年生の時のような新鮮味はあまり漂っていない。
この中学校では毎年4月下旬に日光研修があり、2泊3日の楽しい行事だ。それらに関する話し合い・・・学活の時間が多くなる時期でもある。
そして、今まさに日光研修の前日――それによって事前学習と呼ばれる説明が、先生の口から語られていた。グループなどは既に決められている。
永峰はそれをぼんやりと聞き流そうとしていると、隣に座っている水沢 信慈が、俺の肩を1度ポンと叩いた。2年の時から、水沢とはかなり交流がある。
「何だよ、水沢」
俺は首だけを動かして肩を叩いた主を見て、さも面倒くさそうに反応してみせた。勿論授業中だから、声は落としてだ。
「何だよ、じゃないだろ。去年もそうやって寝てて、俺に後で色々聞いてきたじゃないか」
痛い所を付いてくる奴だ、と思った。その証拠に、胸がズキッとした。心当たりがなければ、こうはならないだろう。
「そんなこと、よく覚えてるな。わかった、ちゃんと聞いておくよ」
数秒間黙って水沢を見た後、俺は諦めたように言った。とりあえずはそう言っておけば、うるさく言わないだろうと思ったのだ。
「そうやってこの場は誤魔化しておこうとか、考えてないだろうな。自分の為にも、ちゃんと聞いておけよ。後で恥をかいても知らないぜ」
そう言ってから、水沢は厳しい顔をして前を向いた。教団に立って話をしていた先生が、軽く睨んでいたからだ。俺も首を竦めた。
先生はコホン、と1つ咳をして話を再開する。セオリー通りの話は面白くもなんともない。俺達は3年生、似たような話を聞くのも3回目だ。
永峰は先生が黒板に向き直り、何か書きながら話すのを一瞥してから、視線を深海 輝一に向けてみた。先生の話にも飽きてきたからだ。
一方の深海は、椅子に座り小さく腕を組みながら前を向いていたが、視線に気付いたのか少し首を動かして俺を見た。
深海は俺と目が合うと、ニヤリと笑みを浮かべて、また先生の方を向いてしまった。意味有り気な笑みに、俺は少し寒くなった。
何だよ、あの笑みは。俺は心の中で反論してみたが、勿論意味のあるものではないし、深海の耳に入るわけでもない。口に出せる時でもなかった。
そんなことを考えている内に、授業終了を知らせる鐘が校舎に鳴り響いた。何時の間にか、授業も終わりだ。それに続いて先生の大きな声と、号令。
今日は早めに帰って明日の準備をしておかなきゃな。去年はつい油断して、用意もせずに寝てしまったのだから、翌朝大変な目にあった。
そんな事になるのは懲り懲りだ。一応は楽しみにしている行事、勉強をしているよりは全然良い。それにしても、明日が中学校最後の日光研修、か。
永峰は窓の外の景色を眺めながら、そんな物思いに耽り、帰りのホームルームも聞き流していた―――
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