時間旅行――タイムトラベル

〜第1節 タイムマシン完成〜

〜登場人物紹介〜
・金井 拓未(かない たくみ)
35歳にしながら天才と呼ばれる時間旅行研究者。
・香川 零(かがわ れい)
28歳のエリート助手。金井の右腕として時間旅行研究を行う。


「やった、遂に完成だっ。これで我々はいつでも好きな時に、過去にも未来にも行くことができるぞっ」
「時間軸の歪みや、過去に行った後の現代の歴史改変などの問題点は完全に克服できたと考えてよろしいのですね?」
「その通りだ。今まで苦労に苦労を重ねて研究してきた甲斐あって、確実に克服できたはずだ」
 2XXX年、アメリカを先頭に時間旅行研究が盛んに行われ始めている中、遂に日本で初めてタイムマシンを独力で創り出した者がいた。
 それが今まで会話を交わしていた金井と、その助手である香川だった。二人は時間旅行を夢見て、十年前から共に研究を重ねてきた間柄である。
 時間旅行を夢見る人々が増えても、問題は絶えなかった。時間軸の一致、歴史の改変……そうした問題を乗り越え、ようやくタイムマシンが完成した。
「早速実験してみよう。私が中学生だった頃…今から二十年前に行こう」
「ええ。では二十年前のこの場所にタイムスリップしましょう」
 金井は興奮冷めやらぬ口調のまま、自分が開発したタイムマシンに乗り込んで言った。香川も金井の後に続き、二人で幾つかのボタンを押していく。
 十数秒後、機械音とともにタイムマシンはふっと研究室から消えた。
 タイムマシンは暗闇の異空間――時間軸を合わせるまでその空間に移動し、問題なく時間軸が合致すると指定した時間に移動する仕組みだ。

 再び十数秒の間をおき、金井と香川の二人は研究室に戻っていた。ただし二十年前の研究室だ。正確にはこれから研究室になる場所である。
「…タイムスリップは上手くいったらしい。成功だ。数値に異常はないな?」
「ええ、異常はありません。時間旅行は成功ですっ。此処は間違いなく二十年前の研究室です。いや、これから研究室になる場所ですよっ」
 初めての時間旅行は無事に成功した。二十年前の過去に移動した金井はデータに異常がないことを確かめると、タイムマシンを降りて香川に告げた。
「ちょっと二十年前の様子を見てこよう。すまないが、君は数値に異常が出ないかどうか確かめていてくれ。私が戻ってきたら君と交代だ」
「わかりました。ごゆっくり」
 右手を挙げ合図すると、金井は付近の様子を確かめるため歩き始めた。
 二十年前の空気を胸いっぱいに吸い込む。陽光を浴びながら彼は思った。
 懐かしい情景に浸れる。時間旅行とはなんて素晴らしい技術なんだ――
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