時間旅行――タイムトラベル

〜第2節 次元の裂け目〜

――金井が香川の元に戻ってきたのは20分ほどが経過した頃だった。いくら時間旅行が出来ても、あまり長居するわけにはいかないのである。
「いやぁ、情景が懐かしくてね。つい思い出に浸ってしまった」
 金井は頭の後ろを掻きながら、苦笑交じりに言った。
「別に構いませんよ、ゆっくりしてくださって。数値に異常はありませんし、博士も実験の成功を噛み締めたいとお思いになるでしょうから」
「ありがとう。今度は私が数値を見ているから、君も行ってきなさい」
「いえ、私は…此処から見た景色だけで充分です。あまり此処に長居しすぎてはいけませんし、いったん我々の時代に戻りましょう」
 香川は目を輝かせ、ゆっくりと周囲の景色をまぶたに焼き付けた。
「そうか。じゃあいったん戻ろう」
 金井も同意し、タイムマシンに乗り込んだ。
「2XXX、二十年後のこの場所にタイムスリップ開始します」
 香川の合図とともに、二人は来た時と同じように幾つかのボタンを押す。
 十数秒後、タイムマシンはそこからふっと消えた。

 が、時間軸を合わせるまでの暗闇の異空間――そこで事故は起きた。
 二人はその表示と現状に戸惑い、青ざめた。現状を上手く把握できない…頭では理解できても受け入れることのできない現状に見舞われたのだ。
「まずい、大きな次元の歪みですっ。このタイムマシンでは耐えられないっ」
「落ち着くんだ。万一次元の裂け目に落ちたとしても、タイムスリップには問題ない。いつの時代に移動するかはわからないが、大丈夫だっ」
「しかし…タイムマシンが壊れたら終わりですよっ」
 さすがの香川も緊急事態に冷静さを失っているようだった。金井も腕組みをし、厳しい表情のまま低く唸っていた。額から一筋の汗がこぼれる。
 唸らずにはいられないのだ。次元の裂け目に落ちれば、いつの時代に飛ばされるかわからない。そして運悪く過去に飛ばされタイムマシンが壊れれば直す術は無く、二度と現代には戻れないかもしれないのだ。
「あっ、ダメです…次元の裂け目に落ちますっ」
 香川の叫び声と同時に、二人の視界は真っ白にスパークした――
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