4月も瞬く間に後半に入った。あとはもうゴールデンウィークを待つしかない、という気分だ。何処も似たようなものだと思うが、何かとイベントが多く、慌しい4月もようやく落ち着きつつあった。
新1年生を見かけると、どうしても昨年の自分の姿を見てしまうようで、少しだけ懐かしくなった。同時に、自分は2年生になってしまったんだな、とようやく自覚出来るようになってきた。
そして、忘れることは出来そうにない、幼馴染との再会。俺の記憶は、始業式の放課後に飛んでいた。
あの後、俺達はぽつりぽつりと過去の思い出話しを続けた。最終的には望の家に着くまで。これも何かの縁なのか、望は俺の住んでいるマンションの向かいのマンションに引っ越してきたのだと言う。
「またあの時みたいに、過ごせるかな」
「過ごせるよ、だって私と深也だもん」
別れ際の望の台詞が甦る。変わってないな、望は――俺はその時、そう思った。
「深也、何窓の外を眺めてるの?」
そんな声を遠くに聞き、俺は我に返った。望が顔を覗き込んでいた。
「いや…始業式のことを思い出してたんだ」
俺は頬杖をやめて、机の上に手を置いて言った。
「あぁ、そっか。私の自己紹介、変じゃなかったかなぁ」
「別に良いと思うよ。ベターな感じで」
「だといいんだけど」
望が微笑む姿だけを視界に入れたかったのだが、視界の端で司馬が近付いてくるのが見えた。
「やぁ、春崎さん。もうこの学校には慣れたかい?」
「あ、司馬君。結構慣れてきたかな。深也や司馬君もいるから安心だし」
「それは光栄だ。なぁ、夢原」
司馬の問い掛けは無視した。勿論望の言ったことに関して、悪い気はしなかった。こうして親しい友達と笑い合えるというだけでも、本当は幸せなことなのかもしれない。
その時教室の前方で、何やら口論の声が聞こえてきたので、ふとそちらに目を向けた。
「何よ、出来もしないくせに、目立ちたいからって委員長になんか立候補してっ」
「別にお前には関係ないだろ。大体その時に反対しなかったんだから、今更言うなよ」
五月と五十嵐だった。あの2人は1年の時から同じクラスで、それなりに親交があった。お互いに仲が悪いというわけではないのだが、何かと口論になるのは、今や日常茶飯事だった。あれほど喧嘩するほど仲が良い、という言葉がぴったりくる2人はいないな、と俺は密かに思っている。
「またあの2人、口論してるな」
俺の視線に気付いたのか、素早く後ろを振り返り、司馬が言った。
「止めなくていいのかな…」
「いいんだよ。あの2人の夫婦漫才はいつものことさ」
望が少し心配そうに言ったので、俺は弁解しておいた。止めに入っても仕方がない。
司馬が望に、昨年の2人の口論の中でも、特に珍事件となったものを取り上げて熱心に解説を始めたので、俺は手持ち無沙汰になって、再び窓の外を見た。
空腹も満たされた、昼時の短い休み時間。春の暖かな日差しと、まだ涼しい風が心地良い。こんな日に時が経つのも忘れて、睡魔に白旗を掲げずにどうするというのか。
「大体あんた、何であたしと同じ五が名字に入ってるのよ。真似しないでくれる?」
「そんなの知ったこっちゃない。大体お前こそ、もっと女らしく振る舞えないのか?」
あの2人、まだ言ってやがる。俺は5時間目のチャイムが鳴るまで、しばし船を漕いだ――