〜第12回 肝試し〜
―――時刻は午後9時を過ぎたところだ。俺達は、深海の別荘の近くにある、墓地の入り口に来ていた。
結局、俺が夕食中に提案した皿洗いの件は、水沢がやる気になってしまい、他の奴もそれに押し切られる形となった。
こういうのは、少しくらい賭け事があったほうが良いのさ。多少なりとも、やる気が起きるのは確かだろ?
さて。そういうわけで、つい先程、満場一致で不正なことをしないであろう、風上によって作られたあみだくじを引いた。
「あ、あたし2番」
「あ、あの・・・私、1番最初みたい」
「同じくトップバッター」
まず月野が2番目を引き、その後続けざまに、風上と苦笑気味の深海が、揃って初っ端を引き当てた。
「お、2番。月野と一緒だな」
「あら。永峰君、よろしくね」
そして俺も2番目を引き、此処に正当なペアが完成した――と、思っていない奴が、実は1人いた。
「・・・と、いうわけで、引かずして3番目のペアが決まっちゃったわけだけど」
「ちぇっ。せっかく女の子を守って、格好の良いところをアピールしようと思ったのによぉ」
「それはこっちの台詞だよ。どうしてよりによって、水沢とペアにならなきゃならないんだよ」
舌打ちをした後、恨めしそうに露草を見上げ、文句をたらたら言っているのは、肝試しを提案した張本人の水沢だ。
露草もこんな奴に付き合わされるなんて、災難だよな。ん? 水沢? あぁ、あれは同情なんかしなくて全然OKさ。
「おい、永峰。お前、何ざまぁみろ的な目で俺を見てるんだ」
おいおい、それは僻みという奴だぜ、水沢――俺は心の中で呟いた。表面では、華麗にスルーがセオリーだ。
そんなこんなで、トップバッターを引き当てた、深海・風上ペアが懐中電灯を手にスタートしようとしていた。
「今まで気付かなかったけど、2人ともお似合いなんじゃない?」
不意に月野が、深海と風上を見て言った。軽く驚きの混じった表情の中に、輝く瞳だけが妙に浮き立って見える。
月野の言う通り、深海と風上はよく似合っていた。こうして見れば、恋人と言って差し支えないんじゃないか?
首を傾けて月野を見返す風上の頬は、暗闇の中でもはっきりわかるほどに、紅潮していることに俺は気付いた。
その時俺は、心の中に暗い陰が立ち込めたことに気付いていた。軽い焦燥感を覚え、頬が引き攣っている。
俺は首を振ってその不穏な感情を跳ね除け、無理に笑顔を作った。そして、心にもない事を口走っていた。
「本当にお似合いだな、2人とも。そのまま付き合っちゃえば良いんじゃないか」
言ってしまった後、自己嫌悪に陥った。深海がふっと一瞬見せた悲しげな目が、俺の瞼に焼き付いた―――
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