〜第13回 不穏〜


―――ちぇっ。本当面白くない。こんなことなら、最初から肝試しなんか、提案するんじゃなかった。

しかも、深海と風上、永峰と月野の2組がやけにしっくりくるっていうか、似合ってるから余計に。

そんなことを考えていると、ふと閃くことがあった。何、肝試しを更に面白くしてやるだけだ。

ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら、水沢は今自分が閃いたことを、露草に耳打ちした。

露草はあまり賛成していないようだったが、水沢は構わず露草を連れて、別荘に向かい始めた。


深海・風上ペアがスタートした直後、水沢・露草のとった行動を、永峰は目の端で捉えていた。

しかし、永峰にとってそれはどうでも良いことだった。今はそれどころではない、それどころでは――

「・・・みねくん、永峰君。どうしたの? 顔、怖いよ?」

顔を上げると、本当に心配している表情の月野と目が合う。一瞬、心臓の高鳴りを覚えた。

「・・・いや、なんでもないよ。ちょっと、さっきのカレーを食べすぎたみたいで、胃が重いんだ」

「そう。無理しないでね。これから守ってもらわなきゃならないんだから」

にこりと上品な微笑みを浮かべ、月野は右手で顔にかかった前髪を払い除けた。

「そうだね。ちゃんと守られてくれよ、お嬢さん」

「ふふ。にしても、水沢君と露草君は、どうして別荘のほうに行ったのかしら」

俺もつられて微笑み返すと、月野は小悪魔的な笑みを浮かべ、別荘のほうへ目を移した。

そういえばさっき、あいつら別荘のほうに戻って行ったんだっけ。何を企んでるんだろう・・・。


――永峰の奴、どういうつもりなんだ。俺が風上とペアになったから、嫉妬してるのか?

だけど、くじ引きなんだから仕方ないじゃないか。確率的には、全員平等だったはずだ――

「あ、あの、深海君。もう少し、ゆっくり歩かない?」

「え? あぁ、ごめん。ちょっと考えごとしててさ。今の俺は、風上のナイトだった」

俺としたことが、女の子の歩調に合わせることを忘れるほど、永峰の言葉に動揺していたなんて・・・。

「それは大袈裟だよ・・・私、そんなに弱い子じゃないもん」

「今のは、俺が格好良いところを見せたくて言っただけさ」

風上の反応が可愛くて、つい気障な台詞が口から出ていた。

こうして微笑み合っていると、時が経つのを忘れてしまう。今肝試し中であるということも。

いや、ダメだ。俺が彼女に恋心を抱くことは、あってはならない。でないと、親友を裏切ることになってしまうから。

俺は自分の心の中に、動揺が生まれていることを知っている。知っていながら、知らない振りをしている――


しばらく月野と2人で、他愛もないことを話していると、深海たちが無事に帰ってきた。

所有時間は、大体15分ってところか。月野はほっとしたように息を吐き、風上に駆け寄った。

「良かったぁ、無事に帰ってきて。実はちょっと、心配してたのよ」

「大丈夫だよ、深海君もいるんだから。緋絽子は大袈裟だよ」

「うん、深海君で良かったわ。水沢君だったら、何するかわからないもの」

風上と月野を見ていると、自然に微笑ましい気持ちが生まれてくる。友情とは素敵なものだ。

その点、俺は深海の心を傷つけてしまったかもしれない。俺はバカな上に、弱い人間だ――

「永峰君、あたしたちも行こう」

「あぁ、今行く。じゃあ、行ってくるよ」

俺は月野に返事をしてから、深海に向かって言った。深海は黙って、1度頷いただけだった―――



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