〜第15回 卒業〜
―――あれから早いもので、もう半年の月日が流れた。考えてみれば、色々な事があったな・・・。
風涼星学園中等部の屋上。普段は立ち入りが禁止されているが、鍵がかかっていることはあまりない。
永峰はそこから、街の景色をじっくりと眺めていた。もう此処から景色を見ることもないのだろう。
何故なら、今日でこの風涼星学園中等部を卒業するから――今日くらいは、立ち入りを許してくれよな。
まだ冷たさの残る風に、少しながら春の香りを感じる。空は何処までも晴れ渡り、心地の良い朝だった。
俺は、此処から見る景色が好きだった。そういえば、此処でよく深海、風上と昼飯を食べたっけ――
「絶対此処にいると思った」
「流石は俺の親友だ」
振り返ると、複雑な表情をした深海が立っていた。卒業するのが嫌なのかな、と俺は思った。
「景色を見てたのか」
「夏休みのことを思い出してたんだ。楽しかったな、あの3泊4日」
「あぁ、あれか。結局水沢が皿洗いをして、その後は夜中まで怪談話をやったな」
ふと深海は、遠くを見つめるような目をした。何処か悲しげなのは、気のせいだろうか。
「そういえば深海は、高校は都心のハイレベルなところに行くんだよな」
「大袈裟だよ。もっとレベルの高い学校はたくさんある」
「そうかな」
「そうさ。それよりも俺は、そのまま高等部に行ける永峰が、少し羨ましく思ったりもするんだ」
俺は思わず深海を凝視した。深海がそんなことを思っていたなんて、考えたこともなかった。
「そうなのか? 知らなかったよ。でも俺は深海ほど頭も良くないし、面倒くさがり屋だから」
「お褒めに預かって光栄。でも、お前も頑張ってたよ。それは俺がよくわかってる」
「ありがとう。卒業してもよろしくな、深海」
「こちらこそ。俺のこと忘れるなよ、永峰」
そして、俺たちは笑い合った。別々の道を行ったとしても、俺たちの友情は変わらない――そう信じていた。
――その時、朝のショートホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴った。
ふと、風上の姿が頭に浮かんだ。まだ告白していなかった。もうチャンスは今日しかない。
今朝そう決断して此処に来たのだ。今日は俺の人生の中でも、分岐点しかもしれないな。
「ヤバイな、そろそろ教室に戻ろう」
そんなことを考えていた永峰は、深海の声で我に返った。そうだ、迷う必要なんかない。
「あぁ。急ごう、深海!」
そして、2人は教室に向かって走り出した。たくさん思い出のつまった、教室へと―――
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