〜第4回 会話〜


―――バスが学校を出発してから、およそ1時間が経っていた。バスの中では、各々が会話を楽しんだり、レクリエーションを楽しんでいる。

バスの向かって左側、後ろの方では、永峰他5人が話をして盛り上がっていた。それこそ、時間が経つのを忘れている人も、中にはいたのかもしれない。

そして今その会話は、丁度永峰が中心になっていた。というより、深海の上手い会話の方向により、喋らされていた、と言ったほうが正しいだろう。

「永峰、何か悩みがあるんじゃなかったか。丁度良い機会だ、そこの女子に聞いてみたらどうだ」

「・・・はひ? いや、深海お前何を・・・。ていうか、何で俺の話になるんだよ」

全く、深海はそういう風に話題を振るのが得意だ。こっちは良い迷惑だけど。おかげで、また声が上擦っちゃったじゃないか、女子のいる前で。

「え、何々? 悩みは相談したほうが楽になるわよ〜」

「いや、その・・・ないこともないけど、なんというか。聞きにくいというか・・・」

それについて、月野が興味を示した。俺は言葉を濁しつつ、月野を見てから、視線を風上に移す。風上は少し頭を傾け、優しい笑顔で俺を見ていた。

その笑顔ズルイよ・・・反則。だって、可愛いんだもん。可愛い女子2人の笑顔受けてるって俺、幸せだな。

――なんて思ってる俺って、かなりのバカ?


「いやさぁ、どうも慣れない女子の前だと緊張して上手く話せないってか、親しくならないと口下手で、ちょっと悩んでて・・・」

「なんだそんなの、気にする事ないじゃん。会話しまくれば、慣れて普通に話が出来るよ」

仕方なく俺が簡単に悩みを打ち明けると・・・いや、別に打ち明ける必要はなかったけどさ、まぁ、此処で話しておいたほうが良いかなって。

「それが出来てれば、今頃悩んでないわよ。そういうところ、水沢君は鈍いんだから」

「なんだよ。だってそうじゃないか。慣れればなんでも、なんでこんなことに勇気を必要としていたんだろう、って思うようになるだろ」

俺の話に真っ先に飛びついてきた水沢の意見も、わからなくはない。慣れてしまえば、後は簡単なのだと思う。特に水沢のように、対応力があれば。

勇気を出して会話に慣れてしまえば、どうってことはないだろう。だが、月野の言うようにそうであれば、今頃は悩んでなどいない。


「私は、無理に慣れなくても良いと思うなぁ。だって、それが永峰君の個性の1つだもん。笑顔で話に入っていれば、良いんじゃないかな?」

「そうよね。無理に今頑張らなくても大丈夫よ。笑顔でいるだけで印象は良くなるし。洸みたいにね」

その時、風上が尤もな事を言ってくれた。月野の言葉に少し顔を赤くし、目を伏せるところがまた、風上らしい仕草だ。

笑顔で会話にいれば、か。そうなのかもしれない、いやそうだろう、と俺は思った。

風上の意見に皆が同意したのか、そこで一旦会話が止まった。大分話し込んだからか、話題がなくなってきているというのもある。

それからは、それまでほとんど会話に加わらなかったものの、話題に入っていた露草の提案で、俺達は子供に戻ったようにしりとりに熱中した。


しばらくしてそのしりとりは、バスが目的地に着いたことで中断された。同時に、バスガイドさんのアナウンスもバス内に流れる。遂に到着、だ。

「楽しかったわ、また後でね」

月野がそう言いながら席を立ち、出口に向かう。また後で? またしりとりをする気なのか?

俺はあぁ、と頷いたけれど、よく意味が呑み込めなかった。

ふと横を見ると、深海が何時もの意味深な笑みを浮かべている。

俺は少し少し顔を引き攣らせたものの、何も言わずに、バスを降りるクラスメートに続いた。

3年目の研修場所は、今までと何も変わらずそこにあった。今年は、何かが起こりそうだな・・・そんなことを考えながら、俺は周りの景色を見渡した―――



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