〜第7回 計画〜
―――それから、更に2ヶ月の月日が流れた。太陽が照ると汗が流れ、むしむしと暑い。遠く、蝉の声も聞こえ始めている。
永峰は相変わらず、深海の陰の手助けを受けながら、少しずつ風上と関わり、話をするようになった。たまに、3人で屋上に行って昼食も食べた。
そして、今日は終業式。風涼星学園も1学期が終わり、明日から夏休みになるのだった。気分はもう夏休み、浮き立っている者も少なくない。
永峰は教室を1度見渡してから、自分の手元に視線を戻した。
その手には、例によって通知表が握られている。成績は・・まぁ、可もなく不可もなく、だ。
個人的には、もうちょっと頑張れば、まだ上を狙えるな、と思っているのだが、現実に“もうちょっと頑張れた”ことがないのも、また事実だった。
しかし、生徒達の声によって騒然としている教室内は、いつにも増してうるさい。
渋面の表情を浮かべるもの、ガッツポーズをつくるもの、成績を聞きまわるものなど、色々だ。
まぁ、確かに成績が悪いものにとっては、浮き立つ夏休みの前に、いきなり現実を突きつけられた気分なんだろうな。ご愁傷様、と言うべきか。
「よぉ、どうだった? お前のことだから、体育だけ3だったりするんだろう?」
「深海、お前は透視能力でもあるのか」
図星だった。体育だけ、毎回3にしかならないのだ。永峰は冗談を言ってみたが、深海にはあっさりとスルーされた。
「ところでさ、ちょっと相談なんだ。俺の親、別荘を持ってるの知ってるよな」
「あぁ、何回か聞いた。それがどうかしたのか?」
「うん。夏休みに、そこにクラスメートの何人かを誘って、旅行に行こうと思ってるんだ」
「ふぅん、そうなのか・・・って、えぇ!?」
見事に深海のペースにはまってしまった。また間抜けな声を出してしまったじゃないか。全く、深海にはいつも驚かされるよ。
「当然、お前も来るよな。風上の他、水沢や月野も誘ってみる。まぁ、その点は俺に任せておけば良い」
「行くけど・・・いや、任せておけばって・・・」
そのニヤニヤとした笑み、怖いんですけど。何を考えているのかサッパリわからねぇ。でも、絶対何か企んでるだろう?
あぁ、深海、俺達は友達だけど、考えてみれば、俺はお前の事を、どれだけ知ってるんだろうな。一緒に机並べて、毎日勉強してるけどさ・・・。
「おい。聞いているか? 予定などは、簡単にこのメモに書いた。詳しいことは、夏休みに入ってから連絡するよ」
「ん・・・あぁ、悪い。ちょっと考え事してた。わかったよ」
そう言いながら、深海に渡されたメモに目を落とす。8月初旬から中旬、各自必要な荷物を持参、か――本当に簡単なメモだな。
「一応、他の奴の予定を聞かないと、日時は確定出来ないからな。永峰は、いつが良い?」
「俺は基本的に予定もないし、いつでも良いけど」
「おいおい。仮にも俺達、受験生だろ。予定ナシかよ。勉強とか、しないのか?」
――いちいち、うるさい奴だな。まぁ、そこがこいつの長所でもあるんだが。どうせ、俺は予定なんてない、インドア人間ですよ。
「今、何か俺に対して何か思っただろ。うるさい奴だな、とか。顔に書いてあるぞ」
「っ・・・。いや、そんなバカなことあるわけないだろ」
やっぱり、透視能力があるんじゃねぇか? 全く、深海には敵わないよ――俺は一人、心の中で苦笑した。
「まぁ、良い。じゃあ、計画が立ったら俺から連絡する。忘れるなよ?」
「オーケー」
話がまとまったその時、予鈴のチャイムが校内に鳴り響いた――ヤベッ、体育館に行かなきゃっ。何時の間にか教室、誰もいないじゃん!
俺は深海と目を見合わせ、顔を綻ばせる。そして、皆が式を始めようとしているであろう体育館に向けて、走り出していた―――
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