メモリアルリミット 〜Limit of memories〜

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〜第19章 Sea and BBQ(2/3)〜


 俺たちが到着した時、時刻は午前十一時になろうとしていた。近くの駐車場に車を止め、海岸に向かうと司馬たち四人は既に揃っていて、早くも水着姿になっていた。
「やぁ。遅かったじゃないか」
 目を糸のように細め、いつもの0円スマイルで話しかけてきたのは司馬だ。隣には初音さんもいて、普段は露出の少ない彼女も今日はナイスバディを強調するビキニのワンピース姿だった。おまけに髪型はいつものツインテールではなくポニーテールで、これはかなりの破壊力である。
「当たり前だろ。お盆休みは終わりかけているが、学生諸君は夏休みの真っ只中だ。見てみろ、チャラそうな大学生連中がうじゃうじゃいるぜ。道が混んでるわけだよ」
 初音さんから視線を逸らし、人混み嫌いの俺は肩を竦めて司馬に愚痴をこぼした。
「お前は乗ってただけだ」
 するとウドの大木こと桜木が横槍を入れてきた。好きでお前の車に乗ったんじゃない。
「だめだよ、深也。せっかく乗せてもらったのに、そんなこと言っちゃ」
 くっ……例の一件から望はやけに桜木の肩を持つようになったな。まぁ俺もその件については不本意ながら感謝してる……って桜木、てめぇ今鼻で笑いやがったな。
「免許を持ってないお前が悪い」
 くっ……の野郎、免許を取ったらお前の車には頼まれても二度と乗らねぇ。
「でもさぁ、祐一と夢原君、なんか結構打ち解けたよね?」
 笑いを堪えながら九条さんがそんなことを言ってきた。それは……どうなんでしょうね。
「楽しそうで何よりだけど、実は若干待ちくたびれてたんだ」
 桜木さえいなければもっと楽しいけどな。てか司馬たちが早く着きすぎたんじゃないか?
「混雑を考慮して早めに出発したんだけど、九時には着いちゃってさ」
 はやっ。まぁ都内在住勢だから距離的にはそっちの方が近かったんだろうけど。
「おー、来たか。水が冷たくて気持ちいいぜ、早く着替えてこいよ」
 海パン姿の五十嵐と、適度に日焼けした五月が波打ち際から戻ってきた。五十嵐はどうでもいいが、さすがは元体育会系、五月もいい身体してるな。尊敬するわ。
「相変わらずつれないねぇ、夢原は。言っとくが佳織は俺の女だからな。ジロジロ見んなよ」
「はぁっ? バッカじゃないの? 調子に乗るんじゃないっ」
「おうふっ……」
 五月の鉄拳が五十嵐のみぞおちにクリティカルヒットした。あー……ありゃ痛いな。
「バカはほっといて、そろそろBBQの準備するんでしょ?」
「あー、うん。海の家は向こうだ」
 しゃがみ込む五十嵐に憐憫たる視線を送りつつ、五月の笑顔に背筋を冷たくしつつ、俺たちは踵を返し海の家への短期ガイド役となって歩き出した司馬に着いて行く。
 五十嵐よ、お前のことは忘れないさ。

 海岸を歩くこと二分、青いペンキで彩られた木彫りの看板が目立つ海の家があった。司馬がメールで言っていたように、奥のテラスが貸し切りになっているようだ。
 司馬の親戚を名乗る人のよさそうなおじさんにBBQ用のセットと食材を貸していただき、早速準備に取り掛かる。セットの設置は俺たち、食材の準備は女性陣の担当だ。
 三十分と掛からず準備は完了し、若干早めの昼食ではあるが、BBQを始めることになった。
「ちょっと、あんたそれまだ焼けてないんじゃないの?」
「へーきへーき」
 五月の忠告も聞かずに、五十嵐はまだ半生の牛肉を次々に口に運んでいく。いや、それはまだかなり赤いと思うんだが。てかもう復活したのかよ。ポーションでも飲んだのか。
「肉はかなり買い込んできたから、皆遠慮せずに食べてくれ」
 前髪を指で弾きながら司馬が言った。とか言いつつ、自分の皿には野菜ばっかりじゃないか。
「俺は新鮮なベジタブルとのバランスを考えながら食べてるのさ」
 あぁそうかい。指摘しなきゃ良かった。何で野菜だけ英語なのかは突っ込まないでおこう。
 司馬の隣では初音さんが中腰になり、食べるだけの連中をよそに食材をせっせと網の上に追加していた。決して出しゃばらないのに、気遣いの行き届いたいい子だ。
「あっ、私も手伝うよ」
「ありがとうございます」
 すると望も初音さんの心遣いに気付き、一緒に食材を投下し始めた。実に微笑ましい情景だ。
 さらに視線を移動させると、焼き加減を慎重に吟味している桜木が目に入った。
「焼きすぎなんじゃない?」
 呆れ気味の九条さんを尻目に、桜木はまだだ、とかぶつぶつ言いつつ割り箸で肉をひっくり返している。そういうところは意外と細かいんだな。まぁ俺もよく焼く派だけど。
「はい、深也」
 皆の観察をしているうちに箸を止めていた俺に、望が食べ頃の肉を差し出してくれる。
「あぁ、ありがとう」
 少し照れたように笑う望が愛らしい。うっかり抱きしめたくなってしまったのは内緒だ。
 俺は場を弁えて衝動を抑え込むと、肉を口に放り込んだ。あぁ、もちろん美味かったさ――


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